和菓子は千年を超える歴史の中で育まれ、日本の食文化を代表するもののひとつとして存在する民族の味である。
和菓子の製造技術は、原材料の特性を活かしつつ、様々な応用と変化を求められるものであり、技術の伝承と向上発展は和菓子産業の振興発展にとって重要である。
しかしながら、昨今の和菓子製造技術は、和菓子製造機械の発達により手づくりの個性ある和菓子製造技術に停滞が見られることや、技術習得のために技術者が就業店間を移動することが減少し、技術がその企業内にとどまる傾向が見受けられるなど、技術の向上が充分に果たされていないなどの問題がある。
技術力の向上には、技術の伝承や指導を効果的に行うことが求められるが、加えて技術者自身の向上意欲を高めることが重要であり、同時に技術力を正しく公平に評価すると共に各人において目標となり得るような認定制度を構築することが求められるところである。
そのため、全国を統一して技術を評価し、権威を持って技術の水準を認定すること、及び優れた伝統的技術を持つ者を認定することを通じて、技術の振興と発展に役立てることを目的として「選・和菓子職」伝統和菓子職部門及び優秀和菓子職部門を開催している。
平成27年より、伝統和菓子職部門と優秀和菓子職部門の審査を隔年で実施することとし、令和6年は優秀和菓子職部門の審査が行われ、審査の結果、10名が優秀和菓子職として認定された。
なお、今回の第12回までに延べ160名が優秀和菓子職として認定されている。
和菓子には、季節の風物などを映しとって創作的な和菓子を製造することの他に羊羹、最中、蒸し菓子、焼き菓子、流し物、打ち物、押し物、その他伝統的にして普遍的な和菓子が数多く存在します。その伝統的な和菓子の製法を守り、優れた技術を有する技術者を認定する制度が「選・和菓子職 伝統和菓子職部門」です。
今回、全国各地より12名の推薦があった。
委員長 | 細田 治 | (全国和菓子協会 会長) | |
委員 | 白松一郎 | (全国和菓子協会 副会長) | |
〃 | 新谷真弘 | (全国和菓子協会 副会長) | |
〃 | 大谷博国 | (全国和菓子協会 副会長) | |
〃 | 板井良助 | (全国和菓子協会 副会長) | |
〃 | 井上源造 | (全国和菓子協会 副会長) | |
〃 | 細田 眞 | (全国和菓子協会 副会長) | |
〃 | 藪 光生 | (全国和菓子協会 専務理事) | |
令和5年5月19日(金曜日)如水会館 会議室において審査会を開催し、審査委員による書類選考と当該和菓子の試食、製法等の審査により行われた。
① 認定候補者が製造する商品が、伝統和菓子職認定に相応しい商品であるか、その製造する菓子が、その製法も含めて一定の水準に達しているかを形状、色彩、味などの視点で審査した。
② 当該認定候補者が伝統和菓子職に相応しい優れた技術と経験及び人格を有しているかを審査した。
③ 当該認定候補者がその商品の製造技術の伝承や後継者の育成に尽力しているかを審査した。
審査委員会において、厳正に審査をした結果、以下の12名が伝統和菓子職として認定された。
氏 名 | 勤務先名 | 認定菓子品目 | 菓子名 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
北野 英樹 | 株式会社金蝶園総本家 | 【 蒸菓子 】 | 金蝶園饅頭 | ||||||
清野 雅義 | 有限会社むらさきや | 【 水羊羹 】 | 水羊羹 | ||||||
野尻 誠 | 株式会社両口屋是清 | 【 蒸菓子 】 | ささらがた大納言 | ||||||
上田 浩人 | 有限会社伊勢屋 | 【 生菓子 】 | くずまんじゅう | 今井 光明 | 株式会社越乃雪本舗大和屋 | 【 干菓子 】 | 越乃雪 | ||
早川 啓二 | 株式会社壺屋総本店 | 【 最 中 】 | 壺もなか | ||||||
正岡 宣征 | 合資会社まさおか | 【 生菓子 】 | 中華まんじゅう | ||||||
牧野 浩之 | 長崎屋本店 | 【 焼菓子 】 | 味噌松風 | ||||||
吉川 肇 | 株式会社カステラ本家福砂屋 | 【 焼菓子 】 | カステラ | ||||||
佐藤 高広 | 有限会社藤宮製菓 | 【 焼菓子 】 | ひなの里 | ||||||
野田 満男 | 有限会社野田屋菓子舗 | 【 生菓子 】 | city fashion いちご大福 | ||||||
佐々木 勝 | 有限会社京山 | 【 漉し餡・大納言粒餡 】 |
令和5年5月27日(火曜日)午後4時より全国和菓子協会 通常総会(東京・如水会館 オリオンルーム)において授与式を開催し、伝統和菓子職 認定証(盾)及び伝統和菓子職 バッジが授与された。
伝統和菓子職と認定された者には
伝統和菓子職 | 認定証(盾) |
〃 | バッジ |
伝統和菓子職認定証、及び、バッジ(意匠登録済)
※伝統和菓子職認定者に授与された認定証、及び、バッジの伝統和菓子職エンブレムは
意匠登録済みのもので伝統和菓子職以外は身に付けることができない。
選・和菓子職で「優秀和菓子職」に認定されることは、誰もが認める優れた和菓子職であり、創作的な手づくり和菓子を製造できる技術があることを証明するものです。同時に和菓子製造に携わる者にとって、最高の栄誉ある勲章を受けることに等しいものです。又、主催者としてこの「選・和菓子職」を最も権威ある認定制度にしていく考えです。
今回、22都道府県より44名の応募があった。
都道府県別の応募状況は以下のとおり
都道府県 | 応募者 | 都道府県 | 応募者 | 都道府県 | 応募者 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
北海道 | 2 | 石川県 | - | 岡山県 | 2 | ||
青森県 | - | 福井県 | 1 | 広島県 | 2 | ||
岩手県 | - | 山梨県 | 1 | 山口県 | - | ||
宮城県 | - | 長野県 | - | 徳島県 | - | ||
秋田県 | - | 岐阜県 | 1 | 香川県 | 1 | ||
山形県 | 1 | 静岡県 | 3 | 愛媛県 | - | ||
福島県 | 1 | 愛知県 | 4 | 高知県 | - | ||
茨城県 | 1 | 三重県 | 2 | 福岡県 | - | ||
栃木県 | - | 滋賀県 | - | 佐賀県 | - | ||
群馬県 | - | 京都府 | 1 | 長崎県 | - | ||
埼玉県 | 2 | 大阪府 | 1 | 熊本県 | - | ||
千葉県 | - | 兵庫県 | - | 大分県 | - | ||
東京都 | 7 | 奈良県 | - | 宮崎県 | - | ||
神奈川県 | 3 | 和歌山県 | - | 鹿児島県 | 4 | ||
新潟県 | 1 | 鳥取県 | - | 沖縄県 | - | ||
富山県 | 1 | 島根県 | 2 | ||||
合計 | 44名 |
認定委員会 委員(敬称略・順不同) ※役職は令和6年7月1日現在
委員長 | 細田安兵衛 | (全国和菓子協会 会長) |
委員 | 白松一郎 | (全国和菓子協会 副会長) |
〃 | 新谷真弘 | (全国和菓子協会 副会長) |
〃 | 野間構三 | (全国和菓子協会 副会長) |
〃 | 大谷博国 | (全国和菓子協会 副会長) |
〃 | 板井良助 | (全国和菓子協会 副会長) |
審査委員会 委員(敬称略・順不同)
委員長 | 西尾智司 | (全国菓子研究団体連合会 名誉会長) |
副委員長 | 梶山浩司 | (全国菓子研究団体連合会 会長) |
〃 | 藪 光生 | (全国和菓子協会 専務理事) |
委員 | 安藤耕一 | (日本菓業振興会 会長) |
〃 | 小林紀夫 | (東和会 副会長) |
〃 | 佐々木勝 | (東京和菓子協会 技術顧問) |
〃 | 清水利仲 | (名和会 副会長) |
〃 | 西村欣祐 | (兵庫県菓子工業組合 理事長) |
〃 | 濱田浩二 | (香川二六会 会長) |
〃 | 長谷川献 | (日本菓業振興会 副会長) |
〃 | 皆川典雅 | (東和会 副会長) |
〃 | 高家啓太 | (京都・塩芳軒 店主) |
〃 | 元島真弥 | (京都・千本玉壽軒 店主) |
審査は厳正、公平、公正を第一義に考え、応募者の氏名、所属などは伏せて、審査番号を付して、全て審査番号により審査を行った。
1. 開催日及び会場
2. 審査の方法
応募者より以下の3種類の製品の提出を求めた。
(1)「薯蕷饅頭」白無地、丸腰高、中餡は小豆こし餡を使用した40g程度の製品を5個
(2)「栗饅頭」小判型、上部に黄身を塗って焼成したもの、40g程度の製品を5個
(3)「浮島を6割以上使って“春”を表現した、創作性のある棹物」4cm×15cm×
高さ3cm程度の製品を2本
3. 各審査委員が審査項目ごとに各審査品について採点した後に集計し、
合計点を出した上で、点数上位の者から順に1次審査通過者とした。
審査の結果、獲得点数上位の者から37名が最終審査に進んだ。
1. 開催日及び会場
開会式で挨拶する 全国和菓子協会 細田 安兵衛会長
2. 審査の方法
最終審査は応募者の製造実技作業の状態を審査した他、以下により行われた。
製造実技の課題は、当日審査会場において発表された課題5点を「煉切」もしくは「こなし」、又は両方の製法を用いて各3個(1個45g程度)を調和良く製造することとした。
(1)当日会場で発表された課題
〔「春」「夏」「秋」「冬」及び「正月」の風物詩〕を題材とする生菓子5種類について、各3個を製造する。
(2)製造時間は1時間45分とした。
課題の生菓子5種類各3個を製造後、製品審査会場に所定の方式に従って提出させ、審査委員、認定委員が製品審査を行った。
審査委員と認定委員による製品審査風景
審査委員が審査項目ごとに各審査品について採点した後に集計し、13名の審査委員の合計点を出し、減点行為、製造された製品の状況等について意見を交わした上で、点数が上位の者から認定候補者とすることとし、審査委員会において認定の水準とすべき点数について議論し、認定候補者を認定委員会に諮問した。
認定委員においては各審査品について、審査委員と同様に製品審査を行った上で、審査委員会から諮問のあった認定候補者について審議し、以下の10名が優秀和菓子職として認定された。
錦織 恵実(広島県) | 福島 善照(島根県) | 佐々木 哲(三重県) |
片山 菜摘(東京都) | 伊藤 彩乃(島根県) | 元島 淳一郎(京都府) |
今福 木乃香(北海道) | 土門 巨幸(神奈川県) | 土門 邦光(茨城県) |
岩本 瑠偉(東京都) |
優秀和菓子職認定者代表への認定証(盾)の授与
これにより、第1回~第12回の認定者は160名となり、都道府県別の認定者数は下表のとおりとなった。
都道府県 | 認定者 | 都道府県 | 認定者 | 都道府県 | 認定者 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
北海道 | 3 | 石川県 | 2 | 岡山県 | - | ||
青森県 | 1 | 福井県 | 2 | 広島県 | 6 | ||
岩手県 | - | 山梨県 | 3 | 山口県 | - | ||
宮城県 | - | 長野県 | 2 | 徳島県 | - | ||
秋田県 | 1 | 岐阜県 | 6 | 香川県 | 1 | ||
山形県 | 2 | 静岡県 | 7 | 愛媛県 | - | ||
福島県 | 1 | 愛知県 | 5 | 高知県 | - | ||
茨城県 | 2 | 三重県 | 5 | 福岡県 | - | ||
栃木県 | - | 滋賀県 | 4 | 佐賀県 | - | ||
群馬県 | 5 | 京都府 | 4 | 長崎県 | - | ||
埼玉県 | 6 | 大阪府 | 8 | 熊本県 | - | ||
千葉県 | 5 | 兵庫県 | 3 | 大分県 | - | ||
東京都 | 50 | 奈良県 | - | 宮崎県 | - | ||
神奈川県 | 8 | 和歌山県 | - | 鹿児島県 | 2 | ||
新潟県 | 1 | 鳥取県 | - | 沖縄県 | - | ||
富山県 | 2 | 島根県 | 13 | ||||
合計 | 160名 |
優秀和菓子職と認定された者には
が授与された。
※優秀和菓子職認定者に授与された認定証、認定バッジの優秀和菓子職
エンブレムは意匠登録済みのもので優秀和菓子職以外は身に付けることができない。
優秀和菓子職のエンブレム(意匠登録済)